「研究部」と、「新宿税法研究会」と共同開催で月刊「税務事例」の特集である表題のテーマを・とりあげた。
【要旨】 我国民法は、被相続人の死亡によって開始した相続につき、被相続人の遺産は、死亡と同時に何らの手続を要せずして、瞬時にその者の法定相続人に承継されるという自動承継方式が採られている(民896条)。
そしてこれを相続人に専属させる手続は、被相続人が遺言で自己の財産につき、その取得者を特定し又は分割を禁止した場合を除き、相続人全員の遺産分割協議に委任されている。
これが遺産の協議分割である。(民907条@)
遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及ぴ性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態その他一切の事情を配慮してこれをすることになっている(民906条)。
ところが一般市民は、民900条の法定相続人が数人あるときは、均分の法理に従うと定めている(民906条)ところから、ほぼ絶対的な原則との理解が浸透しているように見受けられ、トラブルが少くないようである。また、遺産分割に関し、民法は寄与分の持戻し計算(民903条@)が実務上では、案外相続人間の感情の錯綜があったりして、かなり厄介な問題が少なくない。
寄与分の計算は、創設が、昭和55年と遅かったので、寄与分の法的の性格の解釈につき、相続人間の実質的衡平説(仮に調整説という)と相続人の身分的実質的衡平説(仮に身分的財産権説という)との対立があって、実務的にも前者と後者ではかなりの差がでる結果、判例が重ねられても未だ統一的な見解が確立したとはいえないようである。
従ってこれらの事態を引き起こさないためには、先ず被相続人となる者に適格なる遺言を作成して戴くという啓蒙が大切であることは言うまでもないことである。
因み、被相続人が遺言に導入できる事項には
- 相続人の認知(民781条A)、相続人の廃除(民893条)又は廃除の取消し(民894条A)
- 財産の処分(民964条)、寄付行為(民41条A)、包括遺贈、特定遺贈(民964条)
- 後見人の指定(民839条)、後見監督人の指定(民848条)
- 相続人の指定又は指定の委託(民902条)
- 遺産分割方法の指定又は指定の委託(908条)
- 遺産分割の禁止(民908条)
- 相続人相互の担保責任の指定(民914条)
- 遺言執行者の指定又は指定の委託(民1006条)
- 遺産減殺方法の指定(民1034条)
- 特別受益者の持戻免除(民903条B)
- 遺言信託(信託法二条)
- 生命保険金受取人の指定(商676、677条)
の通りである。
そこで遺産分割の方法について、基本的には現物分割が中心となろうが、併せて又は独立して代償分割、換価分割の方法を採ることができるとされている。
現物分割とは、遺産たる物または、権利の個々につき、これを特定又は、共同相続人に分割によって帰属させるものである。
代償分割とは、遺産の全部又は一部を現物で共同相続人中の一人又は一部の者に取得させ、その代わりに取得者に対して他の相続人に支払うべき債務を負わせる分割方法をいう。
換価分割とは、共同相続した遺産を直接分割の対象とはせず、まずこれを未分割の状態で換価し、その対価として得られる金銭を共同相続人間で分割する方法をいうとされている(最高裁第三小、平5.4.5判決)
そこで問題となるのは、これら遺産の分割で取得した後、代償金の支払いのため、その物件を他に譲渡すれぱ、これを譲渡所得が課税されることは明白である。従って譲渡所得者を代償金取得者にまで負担させることは、相続人相互間で何らかの特約があれば別であるが、税法でいう所得税の負担者は、物件の相続人でなければならない。
同様の問題を換価分割で見よう。換価分割は、最高裁第三小法廷判決の事件は、分割協議の時には、すでに売却の合意が成立していたものとの事実認定が行われたものであって、その実態は換価分割に過ぎないとされたものである。参加者からのご意見が数多かった。